マイオピンという点眼液があります。
子どもの近視の進行スピードを抑える働きがある点眼液として、
ここ最近注目されはじめています。
おそらく、今後さらに注目されることが増えるでしょう。
そんなマイオピン。
一体どんな点眼液なんでしょうか?
目次
マイオピンに含まれる主成分は「アトロピン」です。
結論から言ってしまいます。
マイオピンというのは、
「1%アトロピン点眼液」
を100分の1に薄めたものです。
言ってみれば
「0.01%アトロピン点眼液」
という感じでしょうか。
点眼液の名前には主成分名をそのまま使っているものも多いですが、
独自の名前をつけているものも少なくありません。
例えば、「サイプレジン1%点眼液」。
成分名は「シクロペントラート」というものです。
アトロピンと似たような働きをします。
マイオピンというのはそういった、
成分名であるアトロピンではなくて、
独自の名前をつけた点眼液なんですね。
商標登録まで取得済みのようです。
ちなみに、マイオピンというのは
日本のメーカーが作っているものではなくて、
シンガポールの「Eye-Lens Private Limited」という会社が
作っているようです。
日本人向けのWebサイトまで作られています。
日本を大きな市場として考えているのかもしれません。
参考サイト:https://www.eyelens.jp/myopine-jp
関連記事:0.01%アトロピン点眼液で近視の進行をおさえることができる?
アトロピンは、目のピント調節機能を麻痺させるという働きをもっています。
マイオピンの主成分であるアトロピン。
どんな働きを持っているのかというと、
目のピント調節機能を麻痺させるという働きをもっています。
私達の目って、まぶしいときは瞳孔が小さくなって、
目の中に入ってくる光の量を少なくしたり、
反対に、暗いときには瞳孔を大きくして、
目の中にはいってくる光の量を増やしたりします。
また、遠くのものを見ようとするときには
毛様体筋をゆるませて水晶体をうすくさせて、
遠くにピントが合うようにします。
近くのものを見るときは、
その反対に毛様体筋を緊張させて、
水晶体を厚くして、
近くにピントが合うようにします。
アトロピンという成分は、
こういった目のピント調節機能を麻痺させてしまうんですね。
目の調節機能が麻痺すると、
瞳孔は大きくなり、
毛様体筋もゆるんでしまうため、
近くのものにピントを合わせにくくなります。
でも、それが視力の低下を抑えるのにいい働きをするんですね。
シンガポールで行なわれた実験で、低濃度のアトロピンが近視の進行を抑えるということが確認されています。
2006年にシンガポールで、
アトロピン点眼液と視力低下の抑制に関する実験が行われました。
その結果、アトロピン点眼液に、
視力の低下を抑える働きがあるというのが確実になったようです。
そのときに使われたアトロピン点眼液の濃度は「1%」です。
マイオピンの濃度は「0.01%」でしたね。
100倍の違いがあります。
実は、1%アトロピン点眼液は
視力の低下を抑えるのにはいいのですが、
それなりの副作用もあるということが問題点だったんですね。
1%アトロピン点眼液を使うと、
顔が赤くなったり、
発熱したりするという副作用は
日本でも多く確認されています。
そこで、2012年。
それだったら、
アトロピンの濃度を下げて実験してみようということで、
「0.01%」のアトロピンを使った実験が
またしてもシンガポールで行われました。
ちなみに、そのときは「0.01%」だけではなくて、
「0.1%」と「0.5%」も同時に試されました。
その結果、「0.01%」アトロピンだけが、
視力の低下を抑える働きを維持しつつ、
副作用もほとんどみられないという結果をだしたんですね。
その実験データをもとに作られたのがマイオピンです。
だからこそシンガポールの会社が作っています。
ただ、マイオピンは日本ではまだ未承認の点眼液。
そんなマイオピン。
日本でも注目している人が増えてきているようなのですが、
残念ながら、まだ厚生労働省による承認は得られていません。
つまりは、保険適用外の点眼液ということですね。
今のところ、
眼科医が独自にシンガポールから
マイオピンを取り寄せて処方するというカタチになっています。
価格は1本5mlで約3,000円というところが多いみたいですね。
1本で約1ヶ月もつので、
年間の費用としたら、約36,000円になります。
それで、子どもの視力の低下が抑えられるなら
それでも安いものでしょうかね?
日本でも低濃度のアトロピンをつかった実験が進行中なので、今後に期待。
ちなみに、アトロピンを使った実験は、
日本でもちょうど今、進行中のようです。
結果がどうなるかはわかりませんが、
シンガポールではすでに0.01%アトロピン点眼液が
視力低下の抑制に効果があるということは確認されています。
日本でもそういった結果がでる可能性は高いのではないでしょうか。
問題は副作用でしょうか。
もし、日本でも副作用があまりでないということが確認されたのなら、
厚生労働省の認可がおりるはずです。
そうなったら、もっと安くマイオピンを
購入することができるかもしれません。
今後に期待ですね。
参考図書:あたらしい眼科2016年10月号
参考図書:日本眼科学会雑誌2017年7月号