小学生の視力低下が止まらないようです。
視力0.3以下の小学生の割合は、
1979年には「2.67%」だったのが、
2011年には「7.95%」に増えています。
今ではもっと増えていることでしょう。
そこで注目を浴びているのが
「0.01%アトロピン点眼液」というものです。
近視の進行を抑えることができるといわれていますが、
本当なんでしょうか?
目次
実験データによると、近視の進行を約「50%」ほど遅らせることができるようです。
結論から言うと、
0.01%アトロピン点眼液というのは、
小学生の近視の進行を抑制するのに
かなり効果があるようです。
具体的に言うと、
なにもせずにいたら
2.5年で視力の度数が-1.4D落ちるところを、
0.01%アトロピン点眼液を使っていれば、
5年後に伸ばすことができるようです。
2.5年かかるところを
5年に伸ばすことができるということは、
約50%ほど近視の進行スピードを
遅らせることができるということですね。
これってかなり効果があるように感じます。
小学生って6年間ですから、
2.5年で-1.4D落ちるということは、
6年にすると約「-3.36D」落ちることになってしまいます。
それを約「-1.68D」までに
抑えることができる可能性があるということですね。
シンガポールで行なわれた「ATOM-1」と「ATOM-2」という実験。
ちなみにこの実験。
シンガポールで行われています。
シンガポールでも子どもの近視が
問題になってきているんだと思います。
その実験名は「ATOM-1(アトムワン)」と言います。
英語にすると「Atropine for the treatment of childhood myopia-1」です。
和訳すると
「アトロピン点眼液を使った子どもの近視治療」
という感じでしょうか。
そのままですね。
ATOM-1では346人の子どもを対象に、
2年間かけて実験が行われました。
2006年です。
このときは、
アトロピン点眼液に近視を抑える効果が
あるかどうかの確認実験のため、
「0.01%」ではなく「1%」アトロピン点眼液が使われています。
毎日1回点眼を2年間です。
その結果、
1%アトロピン点眼液には
近視抑制効果があることが確認されました。
眼軸長の伸びを抑制する効果も
あわせて確認されています。
関連記事:眼球が伸びることで近視になるというけど、何故伸びる?
でも、点眼をやめてからのリバウンドがすごくて、
点眼をやめてから1年後には、
結局なにもしなかったときの近視の進行に
近い状態になってしまったそうです。
そこで考えられたのが
アトロピンの「濃度」を変えて実験してみるということなんですね。
そして、2012年にATOM-2が行われます。
ATOM-2では、「0.01%」はもちろん、
「0.1%」、「0.5%」の濃度も実験されました。
400人を対象に、5年間かけて行われました。
最初の2年はATOM-1と同じように2年間。
そして1年間、
点眼をやめる時期をもうけて、
残りの2年はまた点眼するという構成になっています。
その結果わかったのが、
0.01%の濃度でも、
近視の抑制効果は得られるということ、
そして、0.01%の場合であれば、
点眼をやめてもリバウンドがとても少ないということです。
0.1%と0.5%では、
やはり点眼をやめたあとのリバウンドが大きかったようです。
そうして、
世界的に0.01%の極低濃度のアトロピン点眼液が
注目されるようになったんですね。
日本でも「ATOM-J」という実験が行われています。
ちなみに、現在、
日本でも0.01%アトロピン点眼液を使った
近視抑制効果の実験が行われている最中のようです。
その名も「ATOM-J」。
日本全国の7つの大学での共同研究となるようです。
旭川医科大学病院、
筑波大学附属病院、
慶應義塾大学病院、
日本医科大学付属病院、
大阪大学医学部附属病院、
京都府立医科大学病院、
川崎医科大学付属病院の7校です。
180人を対象に2年間行われるようですね。
ということは2018年か2019年には
その実験結果がわかるかもしれません。
今のところ、日本では「未承認」の点眼液。
0.01%アトロピン点眼液というのは、
実は日本ではまだ未承認の点眼液です。
1%アトロピン点眼液は承認されているのですが、
0.01%は承認されていないんですね。
なんか不思議な感じですが、
1%は散瞳が目的に使われることが多く、
0.01%は近視抑制を目的に使われるようになるでしょうから、
審査基準が違ってくるのでしょう。
薬局とかでは1%アトロピン点眼液を希釈して
0.01%として患者に渡しているところもあるようですが。
ATOM-Jが行われているのも、
その効果と安全性の確認のためとも言えそうです。
すでにシンガポールでは実験データがでているので、
日本でもそのうちに承認される可能性が高いと思います。
今後の実用化に期待大です。
そんなわけで、
0.01%アトロピン点眼液の小学生に対する近視の抑制効果と、
その実験についての紹介でした。
はやくATOM-Jの実験結果が公表されるといいですね。
もしかしたらテレビなどでも取り上げられるかもしれません。
ただ、なにごともメリットとデメリットがあります。
0.01%アトロピン点眼液に期待しつつも、
様子見半分で待つのがいいのかもしれません。
ちなみに、保険適用外ですが、
0.01%アトロピン点眼液は「マイオピン」という名前で
販売されていたりもします。
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